症 例 83歳 女性
病 名 腰部圧迫骨折による脊髄損傷
初 診 平成26年5月8日
主 訴 ① 腰~臀部の痛みが強い
② 肩、背部、上肢のコリと痛みが強い
現病歴 平成14年(70歳の頃)から腰がふらつき、家の中でも外でもよく転ぶようになった。
平成17年頃から車椅子生活になる。平成24年頃までは立位保持、ベッドから車椅子への移乗も自力で行えていた。
平成24年三男が、急逝してからショックで無気力となり、筋力低下,ADLが低下していった。平成25年膀胱障害のため、膀胱留置カテーテル挿入している。
現在、立位保持、ベッドから車いすへの移乗は全介助の状態、両上肢は問題ないため、車椅子の操作は自立
既往歴 40代の頃、胆のう切除術を行った。
家族 長男、二男と3人暮らし、三男の嫁が日に数回訪問して介護を助けている。
生活状況 息子2人は仕事のため日中独居、朝8時にヘルパーに車いすに移乗させてもらい、14時頃に嫁(三男)が来るまで長時間車いすに乗っている。連日朝夜、訪問介護利用している。週2回はデイサービスを利用。自宅は住宅改修済みで、簡単な調理、洗濯などは行っている。
身体状況 身長150cm、体重 約60kg 認知度異常なし 難聴だが、コミュニケーションは良好 介護度4
後頚部、肩上部、肩甲骨内縁のコリと痛みがある。長時間座位による腰痛、両下肢のしびれとツッパリ感がある。両上肢で、重い身体を支えたり、車椅子の運転を行うため、上肢の疲れと挙上時の痛みがある。
中医検査 顔色 :やや黄色、艶がない
舌質: 淡白 瘀斑、舌下静脈怒張
舌体: 胖大、歯痕
舌苔: 白厚苔
脈: 緊 尺 弱
弁証分析 骨折により瘀血が生じ、経絡が阻滞されている状態が長期間続いている。
高齢により、肝腎両虚の状態
肝腎の極度の陰虚により陽を制御できないための、しびれ、痙攣、半身不随の状態
診断 肝腎陰虚
肝気鬱滞
治療原則 標本同治
治 法 補益肝腎
理気活血
治療 鍼・棒灸
うつ伏せになれないため、側臥位で行う
後面:風池 七頚 肩井  肝兪 脾兪 腎兪 次髎 環跳
前面:中脘 天枢 太衝 太渓 足三里(陽陵泉)豊隆(陰陵泉)
家族 長男、二男と3人暮らし、三男の嫁が日に数回訪問して介護を助けている。

 

経過

1ヶ月後(6回目)  下肢外転時の痛みがなくなる
4ヶ月後(15回目頃)  上肢の疲れと挙上時の痛みが軽減してきた。
6ヶ月後(25回目頃)  腰痛の訴えが減っているが、後頚部、肩上部(七頚~肩井あたり)と肩甲骨内縁(膏肓あたり)のハリが強い。寒さも強くなり両足部の冷感が強く、左足指にチアノーゼ様の変色あり
7か月後(30回目頃)  両足部の冷感徐々に軽減、後頚部、肩上部、肩甲骨内縁のハリは同様

 

現在

上腕部の疲れや挙上時の痛みの訴えは聞かれない。
腰痛は以前ほどではないが、長時間の同一姿勢で重だるさがある。後頚部、肩上部のハリは少しずつ軽減している。
肩甲骨内縁のハリは、時々強くある。