症 例 男性 76歳 無職
初 診 2015年10月9日
主 訴 帯状疱疹後神経痛
現病歴 今年の7月下旬旅行先にて右側の胸部から脇、背部にかけてピリピリとした痛みとともに水疱を発症する。数日経っても痛みが治まらないため8月14日に医師の診察を受けたところ帯状疱疹後神経痛と診断される。
治療を始めたが痛みが治まらず、痛み止めと胃薬を服用。しかし改善の傾向なし。次第に胃も痛くなり食欲は低下し、行動をする気力さえ起きなくなり精神的にも辛い日々が続く。
手が冷たく靴下を履いてねるときもある。
患部の痛みをかばうため右側に傾くような姿勢で来院。声にも力がなく表情も暗い。
既往歴 下肢静脈瘤、虫垂炎、痔、今年の3月頃から時々血圧が高くなる。
中医検査 舌診・淡白 脈診・沈左尺弱
治療 鍼・棒灸
治療穴 風池 天髎 膈兪 肝兪 脾兪 崑崙 百会 内関 足三里 太谿 太衝
経過 二診目(10月10日)
少し痛みが良くなった。睡眠をとれるようになった。普段は夜中にトイレへ2回行くが、行かずに済んだ。

三診目(10月13日)
朝の痛みは治まった。まだ嫌な痛みは残っている。茶碗を洗うとき気になる。

四診目(10月16日)
大分動きやすくなった。

五診目(10月18日)
右胸部の痛みがまだ残っている。

六診目(10月22日)
激しい痛みはない。痛みを感じる日と感じない日の波あり。

以降週に一回の治療を続け十診目の来院時にはほとんど痛みはなくなった。十五診目には痛み及び痕跡はほぼ解消された。

弁証 痛みが治まらず精神的に辛い
→肝鬱気滞

手足が冷たい・舌質淡白
→血虚・陽虚・気虚

脈尺弱
→腎虚

薬剤によると思われる胃痛
脾胃虚寒

治法 益気補血
→足三里・脾兪・膈兪

疎肝理気
→内関・太衝・肝兪

温補腎陽
→太谿・百会

温中健脾
→足三里・脾兪

精神的なストレスにより肝の働きが低下し気が滞ったことで気血の循環が悪い状態にあると考えられる。すなわち治療は疎肝理気を図り、気血を補い、腎の働きを強くし、脾胃を温めて気血を作る必要がある。
補助穴を使い、さらに神経痛発症部の痕跡周囲に局所穴を取り患部の広がりを防ぐ。
本症例は厥陰経の影響が大きいことから表裏関係の少陽経も使用。様々な角度から東洋医学的な配穴が決められている。

結語 本症例は発症から医師の診察に至るまでかなり期間が経過しているそのため肋間神経痛がなかなか改善されず、鍼灸治療を開始した時には発症より二か月以上経過していた。
また、薬剤によると思われる胃痛も加わり患者さん自身が西洋医学的な治療に体力・気力共に不安を感じていた。
難しいと思われる条件にもかかわらず短期間でほぼ完治したということは、中医鍼灸が帯状疱疹後神経痛に対し大きな効果を発揮したことを証明している。