不妊症

 

不妊症とは  ~不妊症の現状~

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子供を持ちたいと思い、定期的に夫婦生活をもっているのに、2年たっても妊娠しない。こういう状態が「不妊」と定義されています。避妊しなければ2年以内に約90%の方が妊娠するので、約10%の方が不妊症ということになります。
最近の統計では6組に1組が不妊症ともいわれています。原因としては、働く女性が増えて心身共に無理を強いる生活を送り、また男性においても過度なストレスなどが、ホルモンの分泌を低下させて不妊症の増加に影響しているとも考えられています。

不妊治療に対して高度生殖医療が日進月歩的に進化して、次々新しい治療法が考案され妊娠できない人を絶望の崖から救い希望をもたらして来ました。高度生殖医療とはいえ、成功するためには良い卵子を得る、良い胚が育つ、ふかふかとした子宮内膜などの条件が必要です。そのため西洋医学は患者のホルモンバランスを見極めて、月経周期に合わせていろいろなホルモン剤を投与します。
ホルモン剤の使用目的は、如何に効果が良く・早くなのですが、それなりに身体の副作用の苦痛に耐えられず、不妊治療を中断したり諦めたりする方が数多くいらっしゃいます。また、繰り返しの排卵誘発剤の使用により、卵巣機能が低下して閉経に至る例もあります。

不妊症をはじめ婦人科疾患に対する治療は以前より中医学(東洋医学)の得意分野となっています。中医学といえば鍼灸療法と漢方療法ですが、妊娠できないということは必ずどこかに問題があります。患者様の体を中医学的四診(問・望・聞・切)で調べ、仮説をたて体質改善に向けて根本的な治療をいたします。

 

不妊症の鍼灸治療による主な作用

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○ 女性ホルモンをバランス良くし、妊娠しやすい体に整える。
○ 良質な卵が育てられて、卵巣機能を高める。
○ 子宮内膜を厚くし、受精卵が着床しやすくなる。
○ 長期的不妊治療による”卵巣過剰刺激症候群”などの副作用を減軽し回復させる。
○ お腹や足の冷えを改善することで、子宮の血行促進になる。
○ 不妊によるストレスや体調不良の改善。
○ 排卵誘発剤の使いすぎで低下した卵巣機能が早く回復する。
○ 月経に伴い不快な症状を緩和する。
○ 骨盤内の血流を改善により、卵管、卵巣の炎症吸収を促進する。
○ 腰や下腹部やお尻、足の冷え症状を改善する。
○ 子宮の収縮を抑制し、早期流産を防ぐ。

 

不妊症の鍼灸治療の主な対象

○ 産婦人科で検査を受けたが特に異常ないけれど妊娠に至らない機能性不妊症。
○ 高度な治療を繰り返してもなかなか妊娠できない方。
○ タイミング法や人工授精、体外受精を成功させるための併用治療を望む方。
○ 卵子が成熟度が低く、上手く排卵が行われない方。
○ 基礎体温の高温期は低くて短い、または体温が二相にはっきり分かれない方。
○ 病院での注射などの治療による副作用がひどい方。
○ 自然周期の妊娠を望みたい方。

 

タイプ別不妊症の症状

一.腎虚タイプ

不妊症の中でもっとも多いタイプ。中医学では生殖機能をコントロールするのは「腎」だと考
えています。
腎の働きが低下すると、卵子の成長と排出に支障を来たす。だから中医学による不妊治療の第一歩は、
腎の働きを強化すること。
腎虚にも更に3つにタイプを分けています。

⑴ 腎気虚

腎気とは生まれつき持っている腎の精気(性ホルモンに相当する)ことです。腎気が衰えると老化現象が現れる。
症状として:生理周期の乱れ、酷ければ閉経になる。めまい・耳鳴り・ 腰と足が常にだるい・疲れしやすい。
高温期でも基礎体温が上がらない、或はわずかしか上昇しない。

⑵ 腎陽虚

腎陽とは五臓六腑の機能を促進し、温煦(温める)する作用というものです。腎陽が弱くなると、体は全体的に冷えてしまう。
症状として:腰腹部冷痛・手足の冷え・頻尿・下痢しやすい・男性は陰萎・早漏・性欲減退・女性は不妊(ホルモンの低下)、卵胞発育不良、排卵障害、基礎体温が上下不安定、生殖器の発育不良)など。他の臓腑の働きも衰弱を引き起こす。

治療方針:鍼灸で温腎助陽助妊(腎を温めるに事により、妊娠し易くする)
常用漢方薬  八味地黄丸・牛車腎気丸・など
よく使う生薬  肉桂・杜仲・続断・莵糸子・巴戟天・覆盆子・肉蓯蓉など

⑶ 腎陰虚
腎陰とは 全身の各臓腑を滋養し、潤沢にするものです。
腎陰不足すると、各臓腑を潤すことできないので、一連に熱っぽい症状が現れる。
症状として:不妊(黄体機能低下や子宮内膜が薄い)・生理がよく遅れ、量も少なく・めまい・耳鳴り・腰、足に力が入らない・手の裏や足の裏や、胸などがほてる・ 煩熱・のぼせ・寝汗・口や喉や皮膚が乾燥する・顔色に艶がない。舌が赤く乾く、苔がない。

治療方針:鍼灸で滋補腎陰、助妊(腎陰を補うことにより、妊娠し易くする)
常用漢方薬  六味地黄丸・など
よく使う生薬  山茱萸・枸杞子・熟地・女貞子・当帰・白芍

二.肝鬱気滞タイプ

ストレス、過労、悩み、怒り、長期的に感情を抑えるなど、先ず傷付くのは肝である。当院では不妊の人の3割ぐらいは当タイプです。肝が影響されると、肝気の巡りが滞ってしまう。
人体において気と血は並行して(離れなく)流れている。気滞により血も滞り、そのため子宮・卵巣に栄養を送れなくなって、妊娠し難くくなる。

症状として: 生理が早く来たり、遅れたりする・生理前から乳房や下腹部が張って痛い・生理痛・生理血中に塊がある・普段から精神的の抑うつ、或はイライラして、怒りっぽい。

治療方針:鍼灸で疏肝理気助妊(肝気の流れを良くして、妊娠し易くする)
常用漢方薬  加味逍遥散・抑肝散・当帰芍薬散・など
よく使う生薬  柴胡・香附子・当帰・白芍・川窮・牡丹皮・延胡索など

 

三.痰湿内阻タイプ

肥満な人や脾腎の弱い人は水の代謝が悪く、水湿が体内に溜まる、長期化すると湿痰が生じる。
この湿痰は気の巡りを妨害し、子宮・卵巣の周りに脂膜を作り、妊娠し難くくなる。

症状として: 肥満な体質・生理がよく遅れる・酷ければ閉経に至る・ おりものが多い・めまい・動悸・ 顔色は艶がない・舌苔が白く厚い。

治療方針:鍼灸で除痰袪湿助妊(痰、湿を取り除いて、妊娠し易くする。)
常用漢方薬  防已黄耆湯・苓桂朮甘湯・加味補中益気湯など
よく使う生薬  半夏・茯苓・陳皮・蒼朮・黄耆

 

四.血瘀阻滞タイプ

生理期、或は産後に冷えたり、不清潔な性生活、ストレスなどにより、骨盤内の血流は渋滞してしまう(鬱血)、古い血が胞脈を詰まり、妊娠し難しくなる。

症状として:生理がよく遅れる、生理の前から下腹部が激痛、生理の量が多かったり、少なかったり。色は黒っぽく塊がある。
このタイプは子宮内膜症、子宮腺筋症通、子宮筋腫、骨盤内炎症、子宮付属器炎によく見られる。

治療方針:鍼灸で活血化瘀助妊(血行を良くして、鬱血を改善、妊娠し易くする。)
常用漢方薬  桂枝茯苓丸・桃核承気湯・大黄牡丹皮湯・温経湯
よく使う生薬  川窮・牡丹皮・延胡索・桃仁・牛膝・莪朮・紅花

 

どちらのタイプに近いか、4つ以上当てはまれば、該当タイプでしょう。
または同時に2つ以上のタイプの症状を持つ場合もよくありますので要注意です。