症 例 男性 会社員 52歳
初 診 2014年5月20日
主 訴 ①両膝痛 ②腰痛 ③首、肩のこり
現病歴 1週間くらい前から左膝周辺、主に上部が歩くと痛む。レントゲン検査の結果問題は見受けられなかった。右膝もかばって歩くためたまに痛む。膝の痛みで夜中起きるため不眠。横になること、立つことが辛い。デスクワークのため座りっぱなしの時間が長く3日くらい前から腰も痛い。首・肩のこりもあり。食欲あり、たばこ・飲酒の習慣なし、便通1日1回状態正常、尿1日8回くらい状態正常。
診察所見 身長170cm、体重67㎏、脈診・右弦尺弱 左弦、 舌質・淡白 舌体・胖大、歯痕、ぜん動 舌苔・白膩苔

 

治療

第1回

横になることが困難なため座位にて鍼と棒灸による治療、ステンレス製1寸3分2番鍼を使用し 風池・天髎・七頚・腎兪・左血海・左梁丘・左曲泉・左足三里・太衝・合谷 への刺鍼、背部への棒灸。

第2回 (5月22日)

症状 膝のするどい痛みが重たい感じになった。腰が痛い。横になれるようになった。
診察 脈診・弦 舌質・辺尖紅 舌体・胖大 歯痕 ぜん動 舌苔・厚白苔
治療 左側臥位にて治療

第3回 (5月23日)

症状 膝の状態だいぶ良くなって力が入るようになったがまだ痛みあり。うつぶせになれるようになった。
診察 脈・弦 左尺弱 舌質・紫暗 舌体・胖大 歯痕 ぜん動 舌苔・厚白膩苔
治療 伏臥位にて 風池・天髎・膈兪・脾兪・腎兪・次髎・環跳・委中 への刺鍼、背部・足底への棒灸、仰臥位にて 百会・神門・左血海・左梁丘・左曲泉・足三里・太衝 への刺鍼。
考察 本症例で考えられる弁証論治は以下の通りと推測しました。

・気血両虚
・慢性疲労 不眠
・臓腑の機能低下と全身の虚弱
・淡白 ぜん動

痺証
淡白 胖大 歯痕 ぜん動 白膩苔 弦脈

治法
散寒温経・・・経脈を温め、寒邪をとる
去湿活血・・・湿を取り除き、血流を改善
去風通絡・・・風邪を取り除き、経脈の流れをよくする
益気補血・・・気血を補う

 

結果

経絡を温めて働きを活発にすると同時に、身体に寒冷をもたらした原因でもある寒邪を取り除き、脾胃の運化機能の改善により、水湿を処理し湿を除去したことによって痛みが緩和し膝に力が入るようになり、治療体位も座位から側臥位、伏臥位、へと毎回徐々に変えられるようになったことから、本症例は痺証による膝痛と考えました。

初めは杖をついて来院してましたが、次第に杖も要らないほどに症状は緩和していきました。以後集中的な治療を続け1ヵ月に11回の治療で痛みもかなり感じなくなり、その後も予防を含め体調管理のため現在も週に1度治療を継続中です。

よって本症例は中医鍼灸治療がとても有効であると考えられます。

 

結語

本症例により中医鍼灸による膝痛への有効性を改めて実感できました。現代医学にて効果が現れにくい症状でも、中医学による治療によって症状が改善されることで、さらなる治療への可能性を感じることができました。そして患者さん自身が前向きになっていくことを実感できたことが私にとって大変大きな価値となったので、今後の糧としていきたいと思います。